研究概要 |
本研究の進展により、本年度は以下の新しい成績が得られた。 1.炎症性眼疾患の発症機構には遺伝的要因が重要な役割を果たしている。とくにベーチェット病ではHLA-B51,HLA-DRw52が、また原田病ではHLA-DR4,HLA-DRw53が、そしてポスナー・シュロスマン症候群ではHLA-DR4が疾患感受性遺伝因子として作用していた。 2.インターフェロンおよびoligo-2´,5´-adenglate synthetase(2-5A)系では、ベーチェット病や原田病の炎症活動期にインターフェロン・ガンマが血清中増加し、これと平行して末肖リンパ球中の2-5A合成酵素が増加した。また、これらはシクロスポリンやステロイド剤の投与により低下した。 3.原田病感者の脳脊髄液中に炎症時にLeu4陽性のT細胞を中心とする細胞増多がみられ、漿液性髄膜炎の発症に密接に関与していた。 4.実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎(EAU)では、網膜由来のS抗原をルイスラットに免疫し、約2週間後に全例で典型的な眼炎症を惹起し得た。イスラットに免疫し、約2週間後に全例で典型的な眼炎症を惹起し得トツた。この実験的眼炎症の発症機構にスーパーオキサイドが関与しているが否かを調べる目的で、スーパーオキサイド・ディスムターゼ(SOD)を筋肉注射したところ、一部のラットでは発症が遅延した。現在、投与量や投与法を変えてさらに実験を継続中である。 以上より、炎症性眼疾患の発症にはある特定の遺伝的要因を基盤として、T細胞の関与による免疫学的機序により発症するものが多いことが示された。従って、シクロスポリンやステロイド剤,SODなどが免疫機構を介して眼炎症の治療に有用であることが肯け、今後さらに動物実験系を用いてその詳細を検討予定である。
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