研究概要 |
本研究の遂行により, 以下のような新しい成績が得られた. 1.免疫応答遺伝子の検索では, 疾患感受性遺伝子に加えて疾患抵抗性遺伝子の存在がベーチェット病で確認された. また, HLA-B27陽性のぶどう膜炎は弾性に多く, 発症年令が低く, 再発率が高かった. 炎症性眼疾患の遺伝的発症機構の解明に向けて, 現在遺伝子レベルでの検索を推進中である. 2.2-5A系の検索では, ベーチェット病患者で有意の高値がみられ, しかもインターフェロン, 2-5ASともにジクロスポリン投与で活性が低下した. 従って, ベーチェット病の病態には高インターフェロン, 高2-5AS活性が深く関与していることが明らかにされた. 3.炎症細胞サブセットの同定は原田病患者の能脊髄液(CSF)リンパ球でおこない, その88%はLeu4陽性T細胞であることを見出した. しかもそれらの多くはLeu3a陽性であり, 本病急性炎症の主体はhelper/inducer細胞が担っていることが示された. これらはステロイド在大量投与により徐々に低下し, CS下中のLeu3a/Leu2a比も消炎とともに低下していった. 4.免疫治療はベーチェット病におけるシクロスポリンの効果, 副作用について検討し, 末梢レベルでのパラメーターの著変なしに奏効することが確かめられた. また, ステロイド療法について, その適応とともに限界についても詳細に考察した. 5.病原微生物学的にはアデノウイルスの血清学的検索およびDNA切断解析をおこない, 結膜炎発症における中和抗体の意義を見出すとともにアデノウイルス37型の新しい亜型を発見した. これらの成績はいずれも炎症性眼疾患の発症機構および治療を解明する上で重要な鍵となる新知見であり, 今後は動物実験モデルでの基礎研究をさらに進めてゆく計画である.
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