ラット、マウス、ハムスターおよびモルモットの各齧歯類動物の顎下腺分泌分節細胞における生化学的および薬理学的特性について、Microdissection法と分取した分泌生分節と各種の薬物刺激により分泌した唾液に含まれる糖蛋白分子種を比較観察する方法を用いて研究した。結果: 1.分泌性分節の糖蛋白Bandのpas染色性は、腺房ではハムスター〓ラット>モルモット【=】マウスで、顆粒管ではハムスター〓ラット〓マウスの順であった。 2.分泌性分節は、腺房ではラットとマウスおよびハムスターでいずれも130KDa、モルモットで53KDa、31KDaおよび26KDa、顆粒管ではラットとハムスターで31KDaの糖蛋白分子種が主体であった。また、マウスの顆粒管は、染色性の著しく弱い5つの糖蛋白分子種がみられた。 3.顎下腺刺激分泌唾液の糖蛋白泳動像では (1) ラットは、ピロカルピン (PIL) 、イソプロテノール (IPR) およびタチキニン類でいずれも腺房由来、フェニレフリン (PHE) で顆粒管由来、 (2) マウスハ、PILおよびIPRで腺房由来、PHEで顆粒管由来、 (3) ハムスターは、PIL、PHEおよびIPRで顆粒管由来よりも腺房由来、 (4) モルモットは、PIL、PHE、フィサラミン (PHY) およびサブスタンスP (SP) で腺房由来の糖蛋白分子種がそれぞれ主体であった。 4.顎下腺の湿重量当りの唾液分泌量は、PILおよびPHEでラット〓ハムスター>マウス>モルモット、IPRでラット【=】マウス>ハムスター〓モルモットの順であった。タチキニン類では、ラットがモルモットより多く、その他の動物で分泌がみられなかった。本研究より、齧歯類動物の顎下腺の分泌性分節細胞は、いずれも数種の特徴的な糖蛋白分子種を含み、そして、ラットとマウスの顆粒管の分子種はα-作動薬、ラットとモルモットの腺房の分子種はコリン性、β-作動薬およびタチキニン類、マウスとハムスターの腺房の分子種はコリン性、α-およびβ作動薬の投与で分泌されることが明らかとなった。
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