研究概要 |
緑膿菌ワクチンによる免疫:緑膿菌内毒素蛋白であるOEPおよび代謝産物抗原であるプロテアーゼトキソイド、エラスターゼトキソイドの三種等量混合ワクチンを白色家兎の背部皮下に300ug/ml/kg注射した。注射は初回、4週後、8週後の3回行なった。免疫前、免疫後2,4,6,8,9週後に血清抗体価を酵素抗体法により測定した。その結果、抗OEP抗体,抗プロテアーゼ抗体,抗エラスターゼ抗体ともにワクチン接種後2週目より著明な抗体価の上昇がみられ9週後(3回目ワクチン接種1週後)も高い抗体価が維持されていた。 緑膿菌の接種:3回目ワクチン接種1週後に【10^7】/mlに調整した緑膿菌IJID1210株の菌液をあらかじめ注射針で角膜実質表層に至る線状の創を付けた角膜に滴下接種した。対照群として非免疫群を用いた。その結果、非免疫群では接種12時間後には創部に混濁浮腫と浅い潰瘍がみられ、24時間後には潰瘍は拡大し浮腫も増加した。48時間後には角膜の1/2の範囲で潰瘍と白濁がみられた。これに対して免疫群は接種早期より上記変化はみられず、12時間後では創の治愈傾向をみた。角膿内の緑膿菌を検出する目的で、螢光抗体法間接法で観察をしたところ、対照群では菌接種12時間、24時間後ともに多数の特異蛍光が角膜内にみられたのに対し、免疫群では、この間には特異螢光は証明されなかった。 今後の計画:緑膿菌の免疫により高い抗体価が得られ、感染を抑制することが明らかとなった。接種された菌は12時間では既に証明できず、非常に早期から菌が消退していることが示唆され、吸着の過程で明らかな障害があるものと考えられる。この点について走査型電顕等を用いて検討したい。
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