研究概要 |
61年度の研究によって、以下の成果が得られた。 1.C波の波形に影響を与えずに最も安定した麻酔状態を確保するために麻酔薬の種類,濃度,投与量を検討し、安定したC波の長時間にわたる直流記録を可能にした。 2.家兎のC波からslow P【III】を単離するための硝子体あるいは静脈中へのヨード酸ナトリウムあるいはアスパラギン酸の投与について、それぞれの最小有効濃度を決定し、これによってslow P【III】を単離する方法を確立し、以後の研究の進展を容易にした。 3.C波および単離したslow P【III】の暗順応および明順応による経時的波形変化の記録に成功した。 4.前項の結果、暗順応の初期と明順応の後期にC波振幅の増大がみられ、C波に杆体成分も加わっていることを示す所見を得た。 5.slow P【III】の波形も明あるいは暗順応によって異る変動経過を呈し、slow P【III】にも明所視性機能の関与が想定された。 6.したがって、C波の発生には、杆体の他に錐体由来の成分も含まれ、これらが明暗状態で複雑に関与し合っていることを示唆する新知見を得た。 7.刺激光の持続時間の長(10秒),短(0.25秒)によるC波波形の差異を知ることによって、それぞれの刺激による明暗順応経過の違いを明確にし、臨床検査としてのC波記録法の簡易化のための基礎資料を得た。 8.杆体性C波の性状をさらに追求するため、色光によるC波記録用の光刺激装置の設計と設置を完了し、基礎実験を開始した。 9.今後は、動物およびヒトの色光によるC波の特性を調べること、記録方法の簡易化をはかることなどによって、網膜色素上皮検査法としてのC波の臨床応用に向けての研究を進める。
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