3年間の研究期間に、下記の成果を得た。 1.家兎のERG・c波を安定して記録するための方法を確立して、以後の研究の進展を得た。 2.家兎にヨード酸Naあるいはアスパラギン酸Naを投与して、ERG・c波のうち網膜内層由来のslow PIII成分を単離し、c波とslow PIIIのそれぞれの明暗順応時の波形変化を記録した。その結果、1)両者とも、暗所視性および明所視性の二元的機構で構成される、2)c波振幅の変動は網膜常存電位には必ずしも並行あるいは依存しないことが明確となった。 3.以上より、c波の発生には、杆体の他に錐体由来の成分も含まれ、これらが明暗状態で複雑に関与し合っていることが示唆された。 4.錐体性c波の性状をさらに明確にするための単色光によるc波記録装置を完全させ、家兎、ニワトリで研究を進めた。その結果、1)家兎眼の単色光c波はその振幅が500nmの刺激による場合が最大で、このスペクトル特性は、視紅の吸光度曲線に近似していた、2)家兎の単色光c波の頂点潜時は600nm以上の長波長の刺激による場合に短縮した、3)ニワトリ眼の単色光c波の振幅は、560〜580nmがピークで、そのスペクトル特性はiodopsinの吸光度特性に近似していた。4)ニワトリ眼の色光c波の頂点潜時は全波長域で一定で、家兎の長波長側での頂点潜時と近似していた。 5.錐体性c波の詳細な分析を行うため、ニワトリ眼を赤色光あるいは黄色光で順応した状態で単色光刺激によるc波を記録した。その結果、1)赤色光順応でのc波振幅のスペクトル曲線は540ないし520nmにピークがあるが、強度の刺激では580nmにも山を形成した、2)黄色光順応では540ないし520nmのほかに、刺激の強さによっては480nmにも山を形成した。 6.以上の結果から、c波構成への錐体の関与が明白となり、c波を用いての錐体、杆体および網膜色素上皮の臨床的機能検査法の開発の道が開けたものと考える。
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