妊娠ICRマウスの妊娠4日目にメチルニトロソウレ3を10mg/kg腹腔内投与したところ、その子に小眼白内障の突然変異体を得たのでその系統化を行い、現在までに兄妹交配で15代に到っている。正常ICRマウスとの交配実験から、この突然変異体は常染色体単純劣性遺伝をすることが確かめられた。 目の発生を組織学的に調べると、胎生10日の小眼白内障マウスでは眼杯腹側部は表皮外胚葉に到達せず、水晶体胞の形成は遅れていた。胎生11〜12日には正常胚では水晶体胞は表皮外胚葉から分離するが、小眼白内障では分離していない。胎生13日の小眼白内障マウスの眼球は正常に比べて小型で、眼杯腹側部には著しい内反やしゅう曲がみられた。水晶体は角膜原基に密着し、水晶体前極部の上皮は角膜上皮と細胞索によって連結していたり、癒着していた。胎生14日では、正常胚では水晶体と角膜は分離し前眼房の形成が始まるが、小眼白内障では両者は密着し、水晶体上皮と角膜上皮の間には癒着や細胞索による連結がみられた。胎生15〜16日になると、小眼白内障胚では水晶体上皮の異常の他に水晶体線維に変形や配列の乱れ、空胞化などの異常がみられ、変性崩壊した水晶体線維が水晶体前極部から角膜組織内や角膜と眼瞼の間に漏出している例がしばしばみられた。 以上の結果から、我々の得た小眼白内障マウスでは水晶体胞と表皮外胚葉の分離が不完全であり、さらに、網膜のしゅう曲によって両者間の連結、癒着が強められる。この様な上皮の異常に伴って水晶体線維は変性崩壊し、水晶体外に漏出するものと思われた。これらの結果は今回の小眼白内障マウスがこれまでに報告されていない新しい系統であることを示している。
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