研究概要 |
著者らは, 単純疱疹ウイルス(herpes simplex virus:HSV)が, 歯肉経由で三叉神経節に急性感染および潜伏感染を起こすが, 更には歯科的侵襲によって潜伏ウイルスが活性化されるかを調べることを目的に本研究を遂行した. 5-6週齢Balb/Cマウスの上顎歯肉に, HSVI型F株の106個のウイルスを接種した. Homosenization法およびExplant法で調べた結果, 同ウイルスが三叉神経節に急性感染を生じた後, 潜伏感染へと移行することが明らかとなった. また, ウイルス感染後に家兎抗HSV抗体で受身免疫をした場合にも, 潜伏感染が成立した. 同抗体は5週後には検出されず, 再感染によって抗体が産生されることが判明した. このことは, 血中抗体の測定によって, ウイルスの活性化(再発)を知ることが可能であることを示唆する. 従って, 従来のようにマウスの三叉神経節を摘出して調べる必要がなくなった. 次に同マウスモデルを用いて, ドライアイスおよびストマレーザーによってウィルスの活性化が生ずるかを調べた. ドライアイス(10秒間11回, 9日間)をウイルス接種部位に接触させることによって, 58.3%のマウスにウイルスの活性化が認められた(血中抗体価の測定). 一方, 歯科治療(再発性アフタ等)に用いられるストマレーザー(0.5mV, 904mm)照射によっては, ウイルスの活性化は生じなかった. 以上のように, 免疫的操作を加えず, 単に神経に刺激を加えること, あるいは上皮に刺激を加えることによって再発が生ずることから, 種々の刺激が潜伏ウイルスを活性化するものと考えられる. 我々の確立したマウスモデルは, 歯科領域における再発因子を調べる際に, また再発抑制因子を調べる際に有用と考えられる.
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