研究概要 |
1.グルココルチコイド(Gc)はin vitroでHSG(ヒト顎下腺由来上皮性腫瘍細胞)のコロニー形成率および細胞増殖を抑制した(Acta Pathol.Jpn.37:587-595, 1987). 2.ヌードマウス移植系でも, 同様にGcはHSG細胞のヌードマウス皮下への生着と腫瘍の増大を抑制した. 同時に, 移植腫瘍の組織像も変化した. Gc投与群の腫瘍組織には, 腺腔に類似する像が著明に見られた. 移植腫瘍について免疫組織化学的検討を加えた結果, Go投与群の腫瘍にEpithelial Membrane Antigen(EMA)陽性細胞が増加した(Cancer,in press). さらにHSG細胞はhECFを産生分泌していることが報告されているが, 今後, Go投与群の腫瘍と非投与群の腫瘍との間で, EMA陽性細胞数に相違が見られるか否か検索の予定である. 3.GcがHSG細胞の増殖を抑制する時, 細胞周期のどの段階で停止しているかを知るために, フローサイトメトリーによるcell cycle analysisを行なった. その結果, HSG細胞のDNAヒストグラムは, 対照群で65.9%(G0-G1期), 18.2%(S期), 16.3%(G2-N期)であった. 1μMGc添加培地で16時間培養には71.7%, 9.8%, 18.7%に変化し, G0-G1期は対照より有為に増加(P<0.01), S期は有為に減少(P<0.01)した. Gc添加4時間培養では対照との間に有為差はみられず, また24時間培養では16時間培養で認められた変化は回復し対照とほぼ同値であった. それ故, GcはHSG細胞のG0-G1期からS期への移行をブロックし, その最大効果は8-16時間処理で表れることがわかった. 4.抗BrdU抗体を用いたDNA/ErdU二重染色によって2次元FACS分析を行なった結果, HSG細胞はGc処理によってG0-G1期に蓄積し, S期の細胞が減少するのが確かめられた 5.HSG細胞を細胞周期の各期に同調させて, 各期のグルココルチコイドレセプター数を現在検索中である.
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