研究概要 |
(1)HSG細胞の細胞周期をフローサイトメトリーで解析した結果、対数増殖期の細胞のDNAヒストグラムは、G0-G1期、65.9±2.1、S期、18.5±1.9、G2ーM期、16.2±2.3%であった。1μM dexamethasone 16h処理によりG0-G1期細胞が71.3±2.3、S期細胞が11.8±1.5、G2-M期細胞が17.7±3.7%で、G0-G1期細胞の増加(p<0.01)とS期細胞(p<0.01)の減少が認められた。(2)G0-G1期にHSG細胞を同調培養し、その後、対照の増殖培地およびdexamethasone添加培地でS期への移行をみると対照培地では約3h後に、1μM dexamethasone処理では、約6h後にS期のピークが遅れてみられた。(3)DexamethasoneのG0-G1 arrest効果は血清あるいはsupplements(10μg/ml insulin,10μg/ml transferrin and 20μg/ml monoethanolamine)添加培地でのみ認められた。つまりglucocorticoidはHSG細胞の増殖の、血清中の増殖因子あるいはsupplementsによって促進される部分を調節すると考えた。(4)GlucocorticoidによるG0-G1 arrest効果は、EGF(10ng/mlor100ng/ml)を同時に添加することによって解除された。一方、conditioned medium(50%)では、その解除効果は明かではなかった。(5)HSG細胞に及ぼすglucocorticoidのG0-G1 arrest効果は1μg/ml cycloheximideを同時に培地に加えてタンパク質合成を阻害することによって、完全に消失した。HSG細胞はEGFを産生分泌していることは、既に知られている。GlucocorticoidはHSG細胞の増殖を抑制する物質の合成をinduceすることによって増殖を抑制し、cycloheximideは抑制物質の合成をブロックすることにより、glucocoricoidによって生じるG1 arrestを解除するという仮説はこれらの結果をよく説明できると考えた。そして、その増殖抑制物質はHSG細胞が分泌するEGFにきっ抗し、HSG細胞の増殖を調節していると考えた。
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