研究概要 |
(1)HSG細胞は、グルココルチコイド(0.01-10μM、16時間処理)によりDNA合成の低下、倍加時間の延長、コロニー形成率の低下などの増殖率の低下および細胞直径の増大、電顕的観察によるintracellular luminaの形成などの形態的変化を起こした。Scatchard解析で、HSG細胞は解離定数6.6nM、結合定数57.8 fmol/mg protein(278 fmol/mg DNA)の特異的な細胞質レセプターを有することがわかった。グルココルチコイドが特異的なレセプターを介してHSG細胞におよぼす増殖抑制効果および細胞形態の変化は、ヌードマウスへ移植した場合の移植腫瘍についても、腫瘤の増大の抑制および組織像の腺管構造の形成と腺管細胞の機能的マーカーであるepithelial membrane antigen陽性裁縫の増加として、同様に認めれらた。(2)グルココルチコイドのHSG裁縫への増殖抑制効果を、HSG細胞の細胞周期でみてみると、グルココルチコイドは、HSG細胞をG0-G1期に停止させ、S期への移行をブロックすることがわかった。このG0-G1 arrest効果は、血清あるいはsupplements(10 μg/ml insulin,10 μg/ml transferrin, and 20 μg/ml monoethanolamine)を添加した培地でのみみられ、さらに培地にEGF(10 ng/ml)を同時添加することによって消失することがわかった。Conditioned mediumあるいはsupplements(insulin+transferrin)ではG0-G1 arrest効果は消失しなかった。またタンハク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドとグルココルチコイドの同時処理を行うと、グルココルチコイドによるG0-G1 arrest効果は発現しなかった。これらの結果から、グルココルチコイドはHSG細胞の増殖を抑制する物質の合成を誘導し、そしてその物質の作用は、EGFの作用にきっ抗するものと考えられた。
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