研究概要 |
1.歯胚の光顕的研究:杯状期,鐘状期初期の歯胚を観察した。臼歯部においては、ほぼラット同様の発生機構を示すが、切歯部ではPigmentationの起る部位が早く組織分化を起こす、即ち、切歯のエナメル器は唇側と舌側部分のみが将来の根尖側に伸長分化する。2.エナメル質の構造:Pigmentationは上顎では口蓋側、下顎では唇および頬側に主におンリ2/3-3/4まで達することがある。エナメル小柱は幅2〜3μmと小形であり、無着色層では複雑な走行を示すが、直色層では着走する。無着色層には象牙細管と連続するエナメル細管があるため、エナメル芽細胞と象牙芽細胞の相互関与によるエナメル細管形成とエナメル芽細胞の動きに重要な関連性があることが明らかとなった。3.Pigmentation:着色の主因は鉄である。高分解能電顕では多くのdislocationが見出されるためapatite結晶中に鉄がCaと置換しているらしい。また結晶の酸への抵抗性が大きいためansovphus状になった鉄の存在も考えられる。レーザー分析(LAMMA)によると酸化鉄が検出されたため、酸化鉄の結晶としての存在がある。以上3つの形態で鉄がPigmentationの原因となっていると考えられる。4.無着色エナメル質と着色エナメル質:着色エナメル質のCa/Pモル比は1.38で無着色エナメル質の1.62より著しく低い。これは上記の結果とよく一致する。また無着色エナメル質はレーザー分析でCa【CO_3】の結晶が多量に存在することが判明した。これはエナメル質形成の原始性と関連すると考えられる。
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