研究課題/領域番号 |
61570869
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
高橋 和人 神奈川歯大, 歯学部, 教授 (00084707)
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研究分担者 |
松本 圭 神奈川歯科大学, 口腔解剖学, 助手 (50181764)
中村 聡 神奈川歯科大学, 口腔解剖学, 助手 (80172401)
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キーワード | 歯の移動 / 歯根膜血管網の変化 / 歯槽骨の吸収 / 骨付き血管鋳型標本 / 蛋白分解酵素消化法 / 走査型電顕 / 無血管部 / 歯槽骨露出部 |
研究概要 |
イヌを用いた下顎第二、三前臼歯の水平移動による歯根膜の血管網と歯槽の変化を血管樹脂注入後、蛋白分解酵素消化法で処理して骨付着血管鋳型標本をつくり、これを走査電顕下で立体的に検索した。その結果: 1.歯根膜の血管網は矯正力の加わった方向に一致してループ状に変化しした。そのループは力の強に比例し、力が弱いときは緩やかなループとなり、力の強いときには長いヘアーピン型ループとなった。このことから歯根膜に加わった力の方向と強さを知ることができる。2.1日後に圧迫側(各根の近心側)に直径数mmの楕円形の無血管部が生じ、歯槽骨(EB)が露出した。これは組織切片では硝子様変性として観察されるもので、特に強く圧迫された部位に一致してみられる。3.無血管部を取り囲んで歯根膜の血管網は特異なループを形成した。このループの直下の歯槽骨面には無数のハウシップ窩が出現し、圧迫側の歯槽骨全体に吸収が始まった(直接性骨吸収)。これに対し、歯槽骨露出部(EB)の表面に吸収窩は観察されなかった。4.その結果3日後では、歯槽骨露出部(EB)だけが一段高く残り、その骨表面のフォルクマン管の開口部などは消失し、平坦な無構造な骨面となった。5.7日後には、一段と高くなったEBは急速に辺縁と骨髄側より吸収され、その大きさを減じた。6.14日後、EBは分断され血管の新生が起こり、新生した血管がEBを被うようになった。臨床的に歯を移動させる際、一部に強い力が加わり、その結果歯根膜血管の血流が止まり、それによって歯根膜組織が変性する現象(硝子様変性)は避けることのできないものとされている。本研究では独創的な方法を用いて、一種の歯槽骨吸収と歯根膜血管との関係を立体的に示し、従来の平面的な切片標本では観察できなかった新知見を立体的に検索できた。
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