研究概要 |
松本歯科大学口腔病理学教室が得た各種病的石灰化物を含む臨床材料は, 昭和61年度予算で購入した超低温フリーザー内で保存し, 酸素活性の低下を防ぎながら研究を進めた. これら臨床材料のうち本年度の主たる研究材料は, 唾液腺腫瘍(pleomorphic adenoma, basal cell adenoma, canalicular adenoma)である. すなわち, pleomorphic adenomaの間質にみられた微小石灰化物についての検索では, その基盤として膜性の構造物の存在を明らかにし, これら構造物のうち少なくとも一部は基質小胞的な働きをして, その初期の石灰化のinitiatorとなり得るものと考えた. さらにこの由来は, 腫瘍の間質変化によるものであると考察した. (Hasegawa et al. J.Matsumoto Dent. Coll Soc.13:115-121,1987). しかし, 同じ唾液腺腫瘍の間質に発生した微小石灰化物でありながら, basal cell adenoma およびcanalicalar adenomaにみられたものは, その基盤に膜性の構造物が認められなかった(Yamazaki et al.J.Oral Maxillofac.Surg.45:270-273,1987,Nakamura et al.J.Matsumoto Dent.Coll.Soc.13:329-336,1987). このことから, 昨年度までに得られたデータすなわち, 病的石灰化部には基質小胞的な働きをする膜性構造物が存在するとの結果は, 全ての場合に当てはまるとはいえないことが明らかになった. そこで, その基盤を組織化学的並びに分析電顕的に検索したところ, 酸性粘液多糖類が多量検出された. 今後はこれら基質小胞に類似性を求めることのできる膜性構造の関与しない石灰化につき, 特にその初期のものにつき微細構造を明らかにすると共に, 免疫組織化学的手法を用いて追究する予定である.
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