研究課題
松本歯科大学口腔病理学教室で取り扱った臨床材料のうち種々な病的石灰化物を含むものを昭和61年度予算で購入した超低温フリーザー内に保存し、酵素活性の低下を防止しながら研究を進めた。これらの臨床材料のうち本年度行なった研究材料は、calcinosis univevsalisおよび顎骨中心性のnearinomaにみられた微小石灰化物である。すなわち前者では石灰化物およびその形成基盤となった組織を分析電子顕微鏡的手法によって検索したところ、EDSによる分析では石灰化物は主としてCaとPのみから構成されており、その周囲組織にもSを含む同種の元素が検出された。WDSによる分析では石灰化物はNa、P、Cl、Caから構成されており、周囲組織からも同種の元素が認められた。これら石灰化物の主成分は電子線回析およびX線回折の結果より、ハイドロキシアパタイトであると同定された(第26回松本歯科大学学会ー昭和63年6月18日ーにて発表;松本歯科大学、14(1):41-48、1889)。ついで後者(murinoma)では、腫瘍細胞周囲のよく発達した外側板上に電子密度の高い球状の構造物として認められた。この多くは同心円層状を呈していたが、中には比較的均質な球状物もあった。これら球状構造物の大きさは一般的に直径約0.2〜03μmであったが、変性傾向にある腫瘍細胞内には直径が1.6μmを超えるものがあり、その外方に針状結晶の成長・増大を認め、これら全体を被包する膜構造があった。また、中等度の電子密度を持ち単位膜構造を示した構造物で、PとCaが検出し得なかったものもあった。以上の観察結果より、本腫瘍組織内に形成された微小石灰化物の母体は変性傾向にある細胞の細胞内小器官にあることが示唆された(第26回松本歯科大学学会ー昭和63年6月18日ーにて発表、J.Clin Electron Microscopy、21(2):167-171、1988)。
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