研究概要 |
イヌ及びラット顎下腺単離腺房細胞におけるムチン分泌機序に関し, 前年度に引き続き検索を行った. 顎下腺脈房細胞の単離は前年の方法に改良を加えた. 即ちラット或いはイヌの両側顎下腺をMcIlwain tissue chopperにて細片とし, collagenase hyaluronidaseの他desoxyribonuclease, trypsin inhibitor及び牛血清を含むCA^<2+>, Mg^<2+>-free Hanks溶液中60分間振蘯し, 得られた細胞をろ過, 遠心分離により精製して用いた. 実験成績は以下の通りである. 1 腺房細胞からのムチン分泌はアドレナリン作動性β受容体アゴニストの他にα受容体アゴニスト, phenylephrine(Phe)によっても促進された. Pheの作用はαの遮断薬phenoxybenzamine(PBZ)により拮抗され, β遮断薬propranolox(Pro)により一部抑制された. 2 Norepinephrine(NE)によるムチン分泌はproにより拮抗され, PBZにより一部抑制された. 3 Ca^<2+>-free溶液中で細胞をインキュベートすることによりPheの作用は消失したがisoproterenol(Iso), NE及びDBCAMPの作用は認められた. 100μMEGTAの添加によりNE及びIsoの作用は減少した. 減少率はNEの方が大であった. 3mMEGTA添加によりNE及びIsoの作用は消失し, DBcAMPの作用は減少したが消失しなかった. 4 NEは^<45>Caの細胞へのuptakeを著明に促進した. Iso及びDBcAMPは45Ca uptake及び^<45>Ca efflux(細胞外Ca^<2+>freeの条件下で)を軽度促進した. 5 ^3H-tetraphenylphosphoniumの細胞への取込みに対し, アドレナリン作動性薬は影響を及ぼさなかった. 以上顎下腺からのムチン分泌にはβ受容体の他α受容体も関与し, cAMP及びCa^<2+>が重要な役割を果すことが示唆された. 膜電位の測定は本法では難しく他の方法が検討課題として残る.
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