研究概要 |
耳下腺の生理的特徴として次の2点があげられる。1.アミラーゼ分泌が蛋白燐酸化酵素Aの活性化剤であるイソプロテレノール(IPR)や蛋白燐酸化酵素Cを活性化するカルバコール(CC),ヌトキサミン,セロトニン,サブスタンスPで促進される。2.IPRによりポリアミン合成の律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素(ODC)の誘導をともなった細胞増殖がみられる。本研究では完全合成培地に浮べたレンズペーパー上で耳下腺explantを培養する系を用いて分泌と酵素誘導の関連を追求し、以下の結果をえた。 1.アミラーゼ分泌を促進する上記薬物は全てODCを誘導し、かつその誘導能は分泌促進能を比例する。また、上皮成長因子はIPRによるDNA合成を増強するが、アミラーゼ分泌とODC誘導を増強しない。 2.1価の金属イオン対するイオノフォアであるモネンジンやナイジエリンはIPRによるODC誘導を、また、ポリミキシンBはCCによるODC誘導を特異的に抑制する。しかし、分泌に対しては抑制効果を示さない。 3.IPRは分子量20K,32K,34Kの耳下腺蛋白の燐酸化を促進する。これらのリン酸化はポリミキシンBでは影響をうけないが、モネンジンは20Kと32K蛋白の燐酸化を阻害する。 4.CCは32Kと34K蛋白の燐酸化を促進する。このうち32Kの燐酸化のみがポリミキシンBで抑制される。なお、ポリミキシンBはIPR依存性蛋白燐酸化には影響を与えない。 これらの結果は、耳下腺でのアミラーセ分泌とODC誘導は共に蛋白燐酸化酵素A及びCの活性化によりおこることを示している。この際、20Kと32K蛋白の燐酸化がODC誘導と、また、34K蛋白の燐酸化がアミラーゼ分泌と関連すると考えられる。
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