研究概要 |
ネコの大脳皮質冠状回前部, 体性感覚領域口腔投射野にスポンタン・スカイブルーと酢酸ナトリユームを封入した微小電極を皮質表面に垂直刺入し, 上下左右犬歯, 臼歯8本の歯牙に順次試験刺激を与えて生ずるユニット放電をシグナルプロセッサーでA/D変換してPSTヒストグラム解析を行い, 歯髄性駆動ニューロン(TPD)の特性を調査すると同時に, 辺緑系, とくに本年度は海馬に330Hz(パルス巾0.2msec, 通電時間100msec, 強さ500μA)の条件刺激を与えたとき生ずるTPDニューロンの興奮性に及ぼす影響を調べた. その結果は次の如くである. 1.TPDニューロンはその放電パターンにより, 潜時の短い急峻なバーストを特徴とするfast-type(F-type)と潜時の比較的長いブロードなバーストを持つslow-type(S-type)とF-typeのバーストに後期放電を伴うFa-typeの三種に分けられた. 2.これらのTPDニューロンは歯肉や口唇粘膜, 皮膚, ヒゲなどの触刺激にも応答するmulti-modalな性質を持っていた. 3.下顎歯の試験刺激に応ずるTPDニューロンは口腔投射野の内側に, 上顎歯の刺激に応ずるTPDニューロンは外側に分布する傾向があった. 4.F-typeユーロンの侵害受容野は狭く, 歯の位置選択性が高かったが, S-typeの受容野は広く, 歯の位置選択性も悪かった. 5.TPDニューロンの興奮性(pulse/bin)や受容野の広さ, および歯の位置選択性は海馬(A3.0〜6.0, L9.0〜12.0, H3.0〜-3.0)の条件刺激により著明な変化を示さなかった. 以上は昭和61年度報告した歯髄性誘発電位の所見と異るところであり, 今後その相異の生ずる原因とTPDニューロンの諸性質に及ぼす扁桃核の条件刺激の効果につき究明する.
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