研究概要 |
ラット弓状核は中脳中心灰白質をはじめとする痛覚抑制の諸中枢へ軸索を送り, かつ内因性痛覚抑制物質β-endorphinを脳内で最も多く含む重要な核であるので, 鎮痛機序を探る対象とした. 1 弓状核破壊実験 電気的に破壊したラット群(n=5)について(1)フォルマリンテストによるbehavior上の疼痛反応 (2)歯髄刺激による開口反射時の顎=腹筋放電の大きさを指標とした針刺激効果をみると, (1)破壊群のPain Ratingはcontrol群に比し有為に高い数値を示し, hyper-sensitiuityであることを示し, また(2)針刺激効果はわずかしか見られず後効果も持続しなかった. 弓状核は針刺激鎮痛に関与するのみならず, 痛みの知覚レベルにも影響を与える核であると示唆される. 2 弓状核ニューロン活動 針刺激によって顎=腹筋放電の大きさは約50%に抑制され後効果も長く持続するが, この時間経過と一致して弓状核のニューロンは自発放電頻度が著しく変動(増大or減少)した. ニューロン活動の変動は, 鎮痛機序と関係があるものと考えられる. 3 弓状核とOpioids 2に述べた針刺激効果とニューロン活動の変動はnaloxoneの腹腔内投与によって拮抗された. また視床下部腹内側基底核群におけるβ-endorphin量は, 針刺激後ただちに断頭したラット群ではcontrol群に比し有為に増大していた. 従って上述2はOpioidsが関与すると考えられる. 4 弓状核刺激による視床下部外側野(LHA)への影響 LHAの侵害受容性応答は弓状核刺激により短潜時の抑制を受けた. 1〜3に述べた液性の長潜時の経路と4に述べたpolysynapticに短潜時に抑制する二つの経路によって, 弓状核は鎮痛の発現に関与するものと考えられる.
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