研究概要 |
エストロジェンの17β-エストラジオール (E_2) には発癌性があるが、培養シリアン・ハムスター胎児 (SHE) 細胞を用いた研究から、E_2は遺伝子突然変異や染色体の構造異常を起こすことなく細胞の形質転換を誘導し、その原因として染色体の数的異常の関与が考えられている。 (Carcinogenesis,8:1715,1987) 。本研究ではE_2の代謝産物と発癌との関連を研究するため、各種エストロジェン〔エストロン (E_1) 、2-OHエストロン (2-OHE_1) 、17β-エストラジオール (E_2) 、2-OHエストラジオール (2-OHE_2) 、4-OHエストラジオール (4-OHE_2) 、エストリオール (E_3) 、2-OHエストリオール (2-OHE_3) 〕をSHE細胞に作用し、それらの形質転換誘導能と染色体異常誘導能を調べた。その結果 (1) SHE細胞に対する増殖抑制効果は、E_1よりも2-OHE_1、E_2よりも2-OHE_2や4-OHE_2に強くあらわれた。ただし、E_3と2-OHE_3は同等であった。 (2) E_2、2-OHE_2、4-OHE_2によりSHE細胞の形質転換が誘導された。これらの形質転換率を比較すると4-OHE_2>2-OHE_2〓1=1〓E_2であった。 (3) E_1、E_2、E_3によって染色体の構造異常は誘導されなかったが、水酸化ささなかった2-OHE_1、2-OHE_2、4-OHE_2および2-OHE_3では高濃度領域で異常が誘導された。 (4) E_2、2-OHE_2、4-OHE_2により染色体の数的異常が誘導された。2-OHE_3においても染色体の数的異常が誘導されたが、2-OHE_2、4-OHE_2にくらべ誘導率が低かった。これらの結果は、E_2の発癌機構にはE_2による染色体の数的異常のほかに、その代謝産物である2-OHE_2や4-OHE_2による遺伝子障害が関与していることを示唆している。
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