研究概要 |
各種の歯科処置術が生体の自律神経系, 感覚神経系, 内分泌系およびストレスなどにどのような影響を与えるかに関する報告は非常に少ない. しかし, ようやく少数の報告例をみるようになっている. 研究代表者らはこれらを明らかにするための実験モデルを開発することに成功している. すなわち, 上顎側方拡大装置, 咬合挙上板装着, 下顎切歯切断術, 臼歯部の抜歯, 臼歯部の咬合挙上義歯装着などの各種歯科処置術が及ぼす各種の影響は顎下腺および舌下腺の組織学的, 生化学的変化から追求できることを明らかにしている. 各種の歯科処置術は施術の方法や部位の差異にもかかわらず, 前記の生体系に非常に類似した影響を与えることが明らかになった. しかし, 異常蛋白質成分と共通抗原性を示す成分(5〜6成分)の合成動態は各歯科処置術ごとに少しずつ異なることも明らかにしている. これらを明らかにすることにより, 各種歯科処置術がどの脳幹部に影響を与えるかを明らかにする端緒を得たいと思っているが, なかなか困難な点も数多く存在するために, 未だに解明できていない. 今後追求したいと思っている. 上顎側方拡大装置は顎下腺, 舌下腺の核酸合成, 蛋白合成に影響を与える. 特に健康な場合に認められない蛋白質を新しく合成する. 腺の肥大や過形成に伴う異常蛋白質の出現は, 癌化との関連性も示唆され, DNAの塩基配列などを明らかにする目的でcDNAをつくりつつある. 鼓索神経や上頚神経節を切除して各種歯科処置術の及ぼす影響を検討したが, 各種歯科処置術は特に副交感神経系に大きい影響を与えた. サブスタンスP(SP)は鼓索神経切除と各種歯科処置術の併用群で有意に増量した. このSPはカプサイシン非感受性のものであった. また交感神経刺激下の矯正装置装着は生体により大きい影響を及ぼすことも明らかになった. これらの結果は数編の論文になったし投稿予定のものもある.
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