研究概要 |
歯肉線維芽細胞は, 血清由来の細胞調節因子のほかに, 線維芽細胞が自ら合成分泌する調節因子(線維芽細胞増殖促進因子)により, その代謝機能が制御されている可能性が大きい. そこで, 次の研究計画に従って, 線維芽細胞増殖促進因子の作用を明らかにすることを目的として研究した. 1.正常および増殖性歯肉炎の歯肉を受体とし, 線維芽細胞を調整・培養 2.線維芽細胞増殖促進因子の分離・精製 3.線維芽細胞増殖促進因子の生物学的活性の測定 4.生理活性物質との関係 〈研究成果〉 1.健康歯周組織を有するVotunteerと増殖性歯肉炎患者より, 辺縁歯肉を切除し, 線維芽細胞を分離・培養し, 5〜9代継代した細胞を実験に用いた. 2.各細胞を10%NCS含有D-MEMで培養後, 無血清培地で24時間培養後の培養上清を得た(粗線維芽細胞増殖促進因子). 培養上清をゲル炉過にて部分精製し, 3つの画分を得た(精製線維芽細胞増殖促進因子). 3.粗あるいは精製線維芽細胞増殖促進因子を, 無血清培地で培養した線維芽細胞のDNA合成を著しく促進した. そのDNA合成促進活性は, タンパク当りで比較すると, NCSの約26倍である. また, コラーゲン合成を促進することが分かった. ゲル炉過で分画した画分(精製線維芽細胞増殖促進因子)のうち30Kの画分が最もDNA合成促進活性が強い. 4.プロスタグランジンA1, D2, E2は, 歯肉線維芽細胞のDNA合成に対し, 抑制的に作用することが分かった. 線維芽細胞増殖促進因子との関係を詳細に検討するにあたり, 実験条件の再検討を要することが分かった. 各種酵素処理の結果より, 線維芽細胞増殖促進因子は, ペプチド様物質であることが示唆された.
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