研究概要 |
実験的歯齦被弁手術後に形成される結合組織性新付着の形成過程を, ラットを用いて電子顕微鏡を用いて病理組織学的に検索した. 1.手術直後では象牙質表層は軽度の凹凸を生じ, 多量のフィブリン様物質で覆われていた. 2.術後1週では象牙質表層に伸展した線維芽細胞が接しており, これら細胞周囲にはリンパ球などが認められた. 3.術後2週では象牙質表層には白亜質芽細胞様細胞が多数認められ, これら細胞は象牙質表面に平行に伸展していた. 象牙質表層には顆粒層が形成され, 電子密度の高い, やや幅の広い層があり, この顆粒状沈着物は一部, 白亜質芽細胞と連結していた. 4.術後4〜8週では, 象牙質表層付近には多数の白亜質芽細胞が認められ歯軸に平行に配列し, 象牙質表面には顆粒層と細網層とから成る再生白亜質層が幅を増して認められた. 顆粒層は象牙質表層にほぼ一定の幅で認められ, 電子密度のやや高い層として認められた. 細網層には, 多数のコラーゲン線維様構造物が種々の方向にはいり込むようにして多数認められた. 5.術後16〜20週では, 象牙質表層に形成された再生白亜質周囲には極性を有すると思われる白亜質芽細胞が多く認められ, また再生された白亜質層に向かってコラーゲン線維束が侵入していた. 再生された白亜質は三層すなわち, 露出した象牙質表層より顆粒層, 細網層, 白亜質基質層を形成していた. 6.歯齦被弁手術後の結合組織性再付着に伴なう再生白亜質の形成は術後2週より開始され, 顆粒層, 細網層, 白亜質基質層の順で露出した象牙質表面に形成された. また, 露出した象牙質面に形成される再生白亜質は, 初期では線維芽細胞が, さらに成熟するに従い白亜質芽細胞がその形成に関与しているものと考えられた.
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