研究概要 |
本研究では,目覚ましい開発・発展を遂げている新素材のうち義歯床用材料に着目し,それらの素材の機械的特性を構造体としての義歯床に十分活用するための最適な負荷方法を検討するとともに,口腔内における機能時の義歯床の応力状態を口腔外で再現するモデルの開発に向け基礎的な検討を行った。 昭和63年度では,咬合時,義歯床に加わる負荷状態を想定した一様曲げモーメントを,全部床義歯試験体に負荷し,義歯床の口蓋部に用られる床用材料が義歯床の機械的特性に及ぼす影響について(高山義孝:口蓋部床用材料が上顎全部床義歯の機械的特性に及ぼす影響,口病誌,55(3):471〜478,1988.)研究成果を発表した。また,荷重状態にある義歯床の前歯部および口蓋部全域の変形を計測,解析を行うため,光弾性皮膜法およびひずみゲージによる測定法を採用した。その結果,義歯床口蓋部全体のひずみ量は,剛性の高い床用材料を用いた義歯床ではひずみの集中は,緩和される。ひずみ集中は,前歯部,切歯乳頭部を含む義歯床前方部に部に生じる。さらに,光弾性皮膜法は強化現象を考慮することにより,義歯床全体のひずみ分布が定性的に求められるばかりではなく,定量的測定を行うための適切なひずみゲージ貼付位置を決定する上で有効であることが示唆された。本研究成果は現在投稿準備中である。 シミュレーションモデルの開発についてはこれまでに得られた基礎的な結果と実際の臨床結果とを比較検討するため,全部床義歯装着者を対象に,その旧義歯および新義歯にひずみゲージおよび小型圧力センサを取り付け,機能時の義歯床におけるひずみ分布を計測し,解析を行っている。
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