研究概要 |
本年度は、各種金属インプラントの内、Ti-Ni合金につき、その形状記憶効果と、生体安全性につき検討した。まず、その耐食性を1%Nacl水溶液中のアノード分極(測定装置は、当該補助金により講入)により評価した所、1200mV付近から電流密度の増加を示す場合に対し、240〜670mVの低電位で、孔食の形成による急激な電流密度の増加を示す場合(以下、低電位溶出と呼ぶ)が認められた。この現象がおこる原因を種々検討した結果、Ti-Ni合金には、母相よりTi濃度が高く、Ni濃度の低い数μmの大きさの析出物が多く存在していることが確認できた。これら析出物と低電位溶出の直接の関連性は、まだ得られていないが、母相に不均一性をもたらす点で、その可能性があり、現在、更に検討している。一方、この低電位溶出を含め、Ti-Ni合金のNiの溶出を抑えるため、表面に純TiをArガス雰囲気下でプラズマ溶射し、コーティング被膜を形成させた。その結果、厚さ100〜200μm程度の純Ti被膜が形成されたが、溶射したままの状態では、Ti被膜と母材間に5〜10μmの隙間が生じており、また被膜も粗かった。しかし、これを950℃で1.5時間程真空焼鈍すると、被膜と母材間の隙間は、なくなり、その代りに、10〜20μmの厚さの両者の合金化した結合層が出来た。また、被膜もより緻密になることが分かった。しかし、この被膜は、この状態では塑性変形態が乏ぼしく、大きな曲げ変形により剥離を生じた。従って、より薄い被膜を形成させる必要がある。そこで我々は、さらに、PVD,CVD,および酸化被膜の形成を試み、アノード分極による耐食性の評価および、形状記憶効果による被膜の付着状況を調べた。その結果、いずれも被覆した状態では、溶出電流が低下し、低電位溶出も認められなかったが、形状回復させた後は、TiCN,TiN被覆は表面に亀裂が生じた。一方、酸化被覆は、変形に対しても安定していた。よって今後、これを中心により完全なコーティングを検討する。
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