研究概要 |
TiNiに関しては, 前年度得た結果をもとに, 形状記憶効果の際の塑性変形に耐えられる被膜の開発を目指し, 酸化膜被覆を試みた. これは, Ti系合金の耐食性の原因である不動態酸化膜を, 前もって形成されることを意図としたものである. その結果, B×^<-12>Torr程度の低真空で, 900°Cで10分加熱することで形成した酸化被膜は, 1%NaCl中でのアノード分極の結果, 形状記憶効果の際の塑性変形に耐えること, 更には, 一度分極した試料を再度分極すると, 電流密度が大幅に下り耐食性が増すことなどが分かった. これは, 分極の際に, 酸化被膜上に, 更に不動態被膜が形成されるためと思われる. しかし, これらの結果は, 分極に際し, 試料の表面研磨後, 端部や浦面は, JISの手法に従い, 絶縁被膜して得たものであった. より現実的なインプラントの形状を仮定し, 端部や裏面を露出し分極すると, 特に端部に孔食が発生した. また平面部でも, 表面粗さの粗い場合は, 孔食が形成されることも分かった. この現象は, 酸化膜被覆によって, かなり抑制されるが, 完全に安全な材料とするには, 更に改善が必要で, 今後の課題とする. また, このような現象は, 生体用材料とし信頼性の高いTi-6Al-4Vでも, TiNi程極端ではないが, 認められた. しかし, この場合は, 酸化膜被覆で孔食の発生が大幅に抑えられることがわかったので, 動物実験によって, この効果を確認する予定である. また, Tiに関しては, 生体との密着性を促進するため, 表面にTiを浴射したインプラントが発売されている. 我々も, アルゴン雰囲気下でTi浴射し, アノード分極を行ったが, 浴射したままでは, 溶出は非常に大きかった. これは, 被膜の状況からも予測出来ることではある. そこで, これを真空下900°Cで加熱処理した所, 浴出は大幅に低下した. このことから浴射後の熱処理の重要なことが分かった.
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