研究概要 |
本研究の目的は、仮封材使用期間中に象牙細管を閉鎖して歯髄を保護し、その上に歯質を強化すると考えられるHY剤を歯科用硬石こうに添加し、石こうの硬化時の膨張による窩洞の緊密な封鎖効果をも期待できる、石こう系仮封材を試作することである。 そこで今回は、歯科用硬石こうにHY剤を添加(0,4,8,12,16wt/%)したときの機械的性質について検討を加えたので報告する。 ○練和方法;温度23±2℃,湿度50±5%の室内で、ガラス板上に2gの粉末を採取し、それを3等分して必要量の水を用いて0,15,30秒毎に粉末を投入し、1分間練和を行った。○混水比;練和泥を1mlとり、ガラス板上に静かに押し出し、練和開始から2分後にガラス板とおもり合計120gをのせ、10分後に長径と短径を測定し、その平均径が24.5〜27mmの範囲を標準混水比とした。この標準混水比を以下の実験に用いた。○凝固時間;練和泥をガラス管につめ、ビカー針を用いて凝固時間の測定を行った結果、HY剤の添加量が増すに従って、凝固時間が長くなった。○崩壊率;仮封材使用期間を1週間と仮定して、37℃水中に1週間浸漬したときの崩壊率の測定を行った結果、HY剤の添加量が増すに従って、崩壊率が大きくなった。○硬さ;練和泥をガラス管につめ、ブリネル硬さの測定を行った結果、HY剤の添加量が増すに従って、硬さが低下した。○硬化膨張;練和泥をテフロン管につめ、小形電気マイクロメーターを用いて膨張量の測定を行った結果、HY剤の添加量が増すに従って、膨張量が大きくなった。○圧縮強さ;直径6mm、高さ12mmの試片を作製し、圧縮強さの測定を行った結果、HY剤の添加量が増すに従って、圧縮強さが低下した。水上試作した仮封材の物理的性質について検討した結果、石こうに対するHY剤の添加量は4〜8%位が適当で、臨床上使用出来るものと考える。
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