本研究の目的は、象牙貨中の無機成分のみならず、有機成分にも作用することが可能なHY剤を、歯科用硬石こうに添加して、仮封材としての使用期間中にその効果が発揮されることを期待し、その上、石こうの硬化時の膨張による窓壁の封鎖効果の向上をも期待できる仮封材を試作することである。 そこで、歯科用硬石こうにHY剤を0〜16%添加して試作した仮封材の物理的そして機械的性質を調べた結果、HY剤の添加量が増すに従って、潜水比、凝固時間そして崩壊率は大きくなり、逆に、表面の硬さと圧縮強さは低下することが明らかになったことから、試作した仮封材の石こうに対するHY剤の添加量は大体8%位が適当と思われた。 つぎに、HY剤の象牙質への作用について検討した結果、HY剤を作用させた象牙質表面にはCa圧が作成していることが、X線回折により明らかになった。また、HY剤の象牙質への浸透は、その作用期間が長くなるほど、大きくなることがEPMAにより明らかになった。 さらに、抜去歯にHY剤を充填し、石灰化溶液中に浸漬した場合、溶液中のCa^<++>やHPO_4^<-->が窩調側にあるときの方がHY剤がすみやかに作用するか、又は逆に、歯髄側にあるときの方がすみやかに作用するかを確認する目的で、HY剤を充填した歯をアクリル樹脂管の中に常温重合レジンを用いて固定し、窩洞側と歯髄がほとを分離して、それぞれを石灰化溶液(Ca^<++>やHPO_4^<-->を含有)、蒸留水そして生理食塩水中に浸漬した後、X線回折そしてEPMAを用いて分析を行った結果、窩底象牙質表面にCaF_2の存在が認められたらは、窩洞側と歯髄側がともに石灰化溶液のときであった。また、Fの象牙質への浸透も同様に窩洞側と歯髄側がともに石灰化溶液のときの方が大きかった。そして、歯質中のCaの増大は、窩洞側が石灰化溶液のときに顕著に見られた。
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