研究概要 |
成牛の長管骨から1MNaClを含むEDTA脱灰して非コラーゲン性蛋白質を抽出し、鶏胚由来骨細胞に対する増殖促進作用を有する画分について、生化学的分析を行い、次のような結果を得た。 1.成牛骨を1MNaClを含むEDTAで脱灰抽出した蛋白質のうち、鶏胚の頭蓋骨由来骨細胞に対して増殖を促進する因子は、pH3.0により沈澱する画分に存在し、さらに、30mMのカルシウムイオン添加により沈澱する画分に認められた。酸の上清およびカルシウムの上清にはほとんど存在しなかった。 2.カルシウム沈澱画分を、イオン交換(ED-52)およびゲル濾過(S-200)クロマトグラフィーを用いて、活性因子の精製を行った。さらに、一部は逆相高速液体クロマトグラフィーにて分離され、そのうちの2つの画分のゲル濾過では、ともに12,500〜25,000の分子量の範囲を中心として活性が溶出してきた。これらの画分は、骨膜や皮膚より調整した細胞にも増殖促進効果が認められた。また、HPLCによる分離でも溶出位置の異なる2つの活性画分が認められた。 3.骨芽細胞様細胞株であるMC3T3-E1細胞に対する作用は、鶏胚由来の骨細胞とは、全く反対に増殖抑制的に作用した。一方、ALP活性に関しては、鶏胚由来の骨細胞と同様の効果を示す画分が認められた。 以上の結果から、成牛骨の脱灰抽出した蛋白質には、骨芽細胞の増殖に関与する性質の異なる複数の因子の存在の可能性が示唆された。また、これらの因子のうのひとつはTGF-βである可能性が高く、TGF-βの口腔偏平上皮癌細胞株に対する作用を検討したところ、一部の細胞株に対し、その増殖を著明に抑制するという結果が得られたが、その詳細については、今後の研究課題である。
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