研究概要 |
下歯槽神経活動電位及び大脳誘発電位を同時記録するための基礎実験として、とくに末梢においての複合神経活動電位をin vivoで導出することを目的に実験を行った。1.方法:ペントバルビタール(25mg/kg)静脈麻酔後家兎(2.5-3.0kg)の下顎切歯歯髄にステンレス針電極、下顎骨骨体部で露出した下歯槽神経に径0.3mm銀線電極、下顎孔部に径0.5mm銀球電極を使用し、順行性及び逆行性に活動電位を導出した。A線維群に対して0.01-0.1ms,1mA,C線維群に対して0.1-1.0ms,30-40mA矩形波定電流刺激を与え(日本光電社製電気刺激装置SEN-1101,アイソレーターSS-1011)、複合神経活動電位をオシロスコープ(日本光電社製VC-10)で観察及び医療用コンピューター(日本光電社製ATAC-350)で10回加算平均後写真撮影を行った(日本光電社製連続撮影装置PLG-6201)。2.結果:(1)下顎切歯歯髄を刺激した場合、下歯槽神経骨体部より潜時5-10ms振幅50μV-0.2mv(伝導速度1.5-3m/s)のC成分のみが導出された。また下顎孔部よりは潜時1.5ms振幅0.8mV(伝導速度28m/s)のAδ成分および潜時9ms振幅50μV(伝導速度4.5m/s)のC成分の2つが導出された。(2)下歯槽神経骨体部を刺激した場合、歯髄及び下顎孔部より潜時10ms振幅50μV(伝導速度10m/s)のC成分のみ導出された。3.考察:結果(1)では、強大な刺激を与えているため周囲組織までも刺激されていること、アーチファクトが大きいことからAδ,C成分の分離が不確実である。結果(2)では、適当刺激を与えているので下顎孔よりAδ成分も導出されるはずである。したがって(1)(2)を考えあわせると刺激強度及び導出方法に未だ不十分な点が残っていると考えられる。今後、方法に改善を加え、刺激と導出を確実なものとした上で、骨体部露出神経に入為的要因を加えた局麻薬を作用させ経時的な反応変化について実験を行いたい。
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