研究概要 |
舌癌は機能保存の点より、小線源組織内照射(Ir針,Ra針,Cs針等)での治療は手術と対比してもほぼ同等以上の成積をあげてきた。しかし5年生存率が60%程度となっている現在、比較的長期観察の結果、舌に刺入された小線源に密接している下顎骨に大線量が照射され放射線による骨壊死等に遭遇する機会も多くなってきている。そこで、これらの障害を防ぐために、先ず、舌と下顎骨との間に何らかの材料で距離を離すことにより、顎骨線量を低減しようと試みた。小線減治療は1週間程線源を舌等に刺入したままでいるので、その期間十分口腔内に装着可能で破損しずらい材質を考えて、歯科用印象材としてシリコンゴム系の一次印象材(コルトフラックス)を使用した。次にこの材料の中にTLD素子を埋め込んでスペーサーの効果による線量低減は可能であるか否か、あるいはどの程度低減可能できたかについて検討した。TLD素子は舌に接した面に3本、下顎歯肉側面に3本横一列に挿入した。照射終了後TLD-Readerを用いてそれぞれの線量を測定し、スペーサー装着時における下顎骨及び歯肉の線量を可及的に正確に測定し、舌側面との線量を比較検討した。組織内照射時約1cm巾のスペーサーを装着する事により50%以上、歯肉側での線量低減が可能となった。また本研究で用いた基列は比較的無味無臭で弾性があり、しかも堅固であるために、装着中口腔内軟組織の損傷あるいは咬合力による破損は認められず長時間の装着が可能であった。次に現在ファントームを用いて、ファントーム中にTLD素子及び、Cs針を刺入留置し、臨床と同条件下の基で、一平面刺入、二平面刺入、立体刺入時の総線量(mgh)により、顎骨の線量が、どの程度影響しているかについて検討中であり、さらに小線源治療による顎骨線量をより正確に評価する予定である。
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