研究概要 |
1.口腔扁平上皮癌新鮮例計80例のDNA-RNA量を測定し, 臨床, 病理像ならびに治療効果との関連性を追求した. DNA-RNA量サイトグラムはI-IV型(前年度報告参照)に大別され, 臨床的にはII, III型にリンパ節転移例が多く, 組織学的にはIII型に高分化型が, II型に異型度の高いものが多かった. 細胞像との対比では, GO期に相当する低DNA 低RNA細胞は一般に小型で, 核も小さいが, 高DNA 高RNA細胞は核, 細胞質とも大きく, クロマチンが増量し, 核分裂を示すものもあった. 放射線, 化学療法効果との関係では, 一般に, I型が効果が低いのに対し, III, IV型は効果が高く, 特に, 著効例では治療早期から高DNA 高RNA細胞(G2M期ならびに異常分裂細胞)の増加がみられるなど, サイトグラムの変動様式は治療効果の予測, 評価に有用な指標となることが示唆された. 今後, 遠隔成績との関係についても検討したい. 2.in vitro抗癌剤投与下におけるDNA-RNA量の推移と細胞像の変化. PEPの静細胞効果濃度では高DNA 高RNA細胞の増加と核, 細胞質の腫大した細胞がみられ, 殺細胞効果濃度ではRNA量が異常に高く, 核, 細胞質の著明に腫大した細胞が増加した. 本細胞は細胞死への1過程と思われた. CDDPでは初期に3C域の細胞の増加(S期ブロック)がみられる他は概ねPEPと同様の変化を示したが, 5FUでは, 全般にRNA量の増加はみられず, 2〜3C域の細胞の蓄積(GS期ブロック)が認められた. これらDNA-RNA量の変化の様相は抗癌剤の細胞回転における作用機序および細胞増殖動態への影響の強さを反映している. 3.口腔扁平上皮癌14例のBrdu標識率を検索した結果, 平均標識率は11.5%だが, 高分化型では標識細胞(S型細胞)は癌胞巣の周辺に多く, 低分化型では混在していた. さらに症例を重ね, DNA-RNAサイトグラムとも合わせ口腔癌の細胞動態の詳細を検討したい.
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