1.口腔扁平上皮癌1次症例67例を対象に、^<60>Co照射、PEP(BLM)、CDDPの術前治療過程におけるDNA-RNA量の推移をDarzynkiewiczの方法を用いて解析し、これと治療効果との関連性を検討した。その結果、GO期細胞はCR・PRではおおむね減少し、特に治療前からGO期が多い割に効果の高いものでは著しい減少を示した。客にNC、PD例ではBO期細胞は増加していた。前者は治療により非増殖相細胞が増殖相に誘導され(リクルートメント現象)。後者は増殖相細胞が減少し、感受性の低い非増殖相細胞が相対的に増加したためと思われた。G_2M期+異常分裂細胞はCR、PR例では増加を示すものが多く、これは^<60>Co外照射、PEP(BLM)のG_2M期ブロックによると考えられた。逆にNC、PD例では治療前からその頻度が低く、わずかな増減にとどまった。異常、DNA-RNA量サイトグラムの変化の様相は治療感受性、効果の客観的な指標となることを明らかにした。 2.口腔扁平上皮癌培養細胞に抗癌剤(PEP、DDP、5-Fu)を種々の濃度で投与し、DNA-RNA量、細胞数、細胞像の推移を検討した。その結果、DNA-RNA量サイトグラムの変化は、各薬剤の細胞回転における作用機序に基づいた細胞増殖動態への影響、抗腫瘍効果を直接的に表現していた。 3.リンパ節転移に関与すると思われる種々の因子について、多変量解析(数量化2類)を行った。その結果、原発部位、核DNA量・核面積散布図、DNA-RNA量サイトグラム、および組織学的悪性度(小浜ら)との組合わせが高い確立(相関比0.765)でリンパ節転移に相関性を示し、しかも各々独立した因子として関わっていた。Cox重回帰型生命表法(比例ハザードモデル)を用いた治療成績の推定では、年齢、DNA-核面積散布図、組織学的悪性度、治療方法が、それぞれ0.6217、0.6204、0.7092、2.0267、推定値で、有意に各々独立した因子として生存率に寄与していることが判明した。
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