研究概要 |
前年度に引き続き, 実験材料として体重約100gのウィスター系ラット(♂)を使用し, ツィストワイヤーをラットの第1臼歯(M_1)および第2臼歯(M_2)の隣接部に挿入し, 1, 3, 5, 7, 9, 15, 30日後に屠殺し, M_1とM_2の隣接する部位の歯槽骨および歯根膜組織を採取し, 中性塩不溶性のコラーゲンの抽出を行った. I, コラーゲンのCNBr開裂を行い, CMセルロースカラムを用い, 〔α_1(III)_3〕型コラーゲンの経日的な変化量を測定したところ, 実験群は対照群と比較して歯の移動開始3日目で著しいIII型コラーゲンの産生をみた. この結果は, 前年度, 電気泳動法でIII法コラーゲンをみた変化と全く同様の傾向を示した. II, ラットの上顎臼歯部にツィストワイヤーを挿入し, 40NgのPGE2を歯肉部に注射して, 1, 3, 5, 7日後に屠殺し, III型コラーゲンを抽出して対照群と比較したところ, 1日, 3日目にIII型コラーゲンが増加し, なかでも1日目が最も著しい変化を示した. III, 実験IIと同様にDB-cyclic-AMP, A-23187を単独に注射した場合には実験群と比較して変化は認められなかったが, 両者を一緒に混和して注射した場合には著しいIII型コラーゲンの増加が認められた. IV, 実験IIと同様にPTHを投与したところ, III型コラーゲンの量に著明な分化は認められなかった. V, 実験IIと同様にカルシトニンを注射した場合には, 実験群と比較してIII型コラーゲンの量はやや減少する傾向を示した. VI, 無菌的に採取した試料を器官培養し, 歯槽骨および歯根膜組織のコラーゲンを常法に従って抽出し, III型コラーゲンの経日的変化をみたところ, In VitroにおいてもIn Vivoと全く同一の傾向を認めた. 以上の結果より, 今後, 歯の移動量(矯正力の強さ), 炎症の程度およびIII型コラーゲン量の動態に対する相関関係について, 詳細な検討を行い, 小児歯科臨床に役立たせることが急務と思われる.
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