研究概要 |
乳歯列における齲蝕診査の妥当な検診間隔については定説がなく、視診では初期段階の臼歯隣接面齲蝕が看過されやすい欠点がある。既に昭和58年度保育園児を対象に従来の視診型診査に加えて線維光学機器による透視診査を6ケ月間隔で実施したところ、乳臼歯隣接面に36例の突然高度齲蝕歯面を観察したから、検診間隔と方法の再検討を指摘した。そこで、視診検診方法の改善をはかり、併せて妥当な検診間隔を調べるために本研究を行った。 対象と方法:昭和61年度仙台市内保育園児1,046名を対象に3ケ月間隔で3回の前述と同様の歯科検診を行った。対象児を台上に仰臥させ、鋭利な歯科用探針歯鏡、歯面乾燥と乳臼歯隣接面齲蝕検出用として透照装置を使用し、診査した。 結果、:1.本対象の3ケ月間隔の集団平均の齲蝕増量は1歳児で0.16と少なく、3,4歳児では各々0.71,0.62歯と多かった。個人別の齲蝕増量について、各3ケ月間隔のいずれかにおいて3歯以上の増加を示した幼児数とその割合は1歳で9名(6.6%),2歳で20名(9.6%)であり、3歳で38名,13.8%と高率であった。さらに、4,5歳の幼児の約1割においても高い齲蝕発病が認められた。2.透視診査の対象である乳臼歯隣接面において、健全歯面または透視による検出歯面の3ケ月後に高度齲蝕へ進行した例数は各々4例と18例であったから、突然高度齲蝕例における3ケ月前の透視診査による検出率は81.8%と高かった。しかも、健全歯面からの進行例のうち2例は修復物の脱落による齲蝕歯面の拡大したものであり、他の2例は咬合的に存在した高度齲蝕の拡大によるものと思われた。 以上から、齲蝕感受性の高い幼児には3ケ月間隔の歯科検診は必要であり、また、従来看過されていた乳臼歯隣接面齲蝕に関しては、視診型に線維光学照明装置を用いる透視診査を追加する方法を3ケ月間隔で行うことにより、突然高度齲蝕例を減少させることが可能であると考えられた。現在、研究を継続中である。
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