研究概要 |
本年度は, 大脳皮質を主体とした疼痛を知覚, 認識する中枢神経系の発達程度が, どの程度乳歯の疼痛閾値に影響を与えているのかについて研究を進めてゆく考えであった. しかし, 前年度の研究計画目的である, 乳歯の疼痛閾値と永久歯の疼痛閾値との差をまだ完全には明らかにできておらず, 現在研究中である. 現在までに得られている結果は次のようなことである. 1.成人の歯根の完成した永久中切歯の疼痛閾値は,疼痛により咬筋に生じる抑制反射を平均加算することにより, 客観性のある測定値として得られる. 2.永久中切歯の疼痛閾値は,疼痛により生じる自律神経の興奮を皮膚の電気抵抗値の変化として測定することによってもまた, 客観的に表示しうる. 3.小児の歯根が完成し, かつ歯根の吸収のない乳中切歯の疼痛閾値もまた, 疼痛により咬筋に生じる抑制反射, ならびに疼痛により生じる皮膚の電気抵抗値変化として, 客観的に測定可能である. 実験を行っていく上で次のような問題点が提示された. 1.乳中切歯が歯根安定期にある小児は, もともと研究に協力的な者は数少なく, 実験対象の選別がむずかしい. 2.比較的協力度の高い小児であっても, 疼痛を感じる前の状態(プリベイン)を具現化する能力が乏しいため, 過度の通電を行いやすく, 一度疼痛を与えるとその後の協力が得られにくくなる. 以上の問題点をふまえた上で, 今後次の点を重視しながら研究を進めてゆく考えである. 1.統計的に意味のある数の被験者を, 可及的に選別する. 2.可及的に被験者に疼痛を与えないようにするために, 指標となる反射の読み取り精度を向上させる.
|