研究概要 |
歯周組織における感染防御機構及び歯周炎の発症・進展過程におけるランゲルハンス細胞(LC)の役割を明らかにする目的で、歯肉におけるLCの動態検索を進めている。本年度は、ヒト並びに実験動物LCの同定法に検討を加え、併せて口腔上皮と表皮におけるLCの所見を比較した。方法としては、ヒト,モルモット,ラットより歯肉を含む口腔粘膜と皮膚を採取し、パラフィン,凍結,電顕及び粘膜上皮・表皮シート標本を作製した。パラフィン切片には酵素抗体法によるS100蛋白(S100)染色,シートあるいは凍結切片にはATPase反応を施した。さらに、ヒト凍結切片には、T6,T4,HLA-DR抗原に対する酵素抗体染色を行った。結果:1.ヒト表皮・口腔上皮においては、いずれの一次抗体によっても基底層付近に陽性細胞の多い傾向が示され、樹状陽性細胞の出現頻度はT6≧S100>HLA-DR>T4であった。但し、S100抗体はメラノサイトとも反応していた。2.モルモットでは、棘細胞層の樹状細胞がATPase陽性を示したが、これらはS100抗体には反応しなかった。一方、表皮基底層(特に耳)にはS100に対する染色性を異にする2種類の樹状細胞が認められた。3.S100の染色性はトリプシン処理によって増強された。4.T6染色及びATPase反応によって、一般に、ヒト・モルモットの口腔上皮では少数のLCが不均一に分布しているのに対し、表皮では発達した突起により網工を形成していることが示された。また、電顕的にも表皮LCはBirbeck顆粒に富むものが多く、口腔上皮LCとの間に差異がうかがわれた。5.ラットでは、光顕的には明瞭なLC像を得られなかったが、電顕的には、表皮・口腔上皮のみならず、歯肉溝上皮や接合上皮にも未熟型を含むLCが存在することを確認した。
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