研究概要 |
成人型の辺縁性歯周炎患者の歯周ポケットより高頻度に分離されるBacteroides gingivalisが, 培養上清中にSH依存性コラゲナーゼ等の酵素を分泌することを以前に報告し, 本酵素がB.gingivalisの有力な病原因子の一つであることを示唆した. ヒト血清中には, α_2-Macroglobulin(α_2-MG)を含む種々のプロテアーゼインヒビターが存在し, コラゲナーゼ等の酵素による組織や細胞の破壊に対し防御反応を示していると考えられているが, 本菌が生息する歯周ポケット内にも唾液成分の他に種々の血清成分が存在しているため, 今回の研究では本酵素の歯周ポケット内での動態をより明らかにする目的で, SH依存性コラゲナーゼがこのような血清成分により如何なる影響を受けるかを検討した. B.gingivalisのコラゲナーゼは培養上清のアセトン分画・ゲル炉過・イオン交換によって抽出・部分精製し, その結果, 比活性は培養上清に比べ115倍にまで上昇した. 血清成分として, Human γ-glooulin(H-γG), Rabbit-γG(R-γG), H-α_2-MG, R-Albumin(R-A), anti Bacterbides gingivallis381R-γG(anti381R-γG)を用いた結果, 本酵素活性はグロブリン画分だけでなく, アルブミン画分でも同様に阻害されることが明らかとなった. このことは, 口腔内での生体防御機構により歯肉溝侵出液中に存在する血清成分が, 本酵素活性を著しく阻害するという興味深い結果が得られた. しかしながら, B.gingivalisはコラゲナーゼと同時にα_2-MGにより阻害を受けないプロテアーゼを産生し, IgAを含む種々の血清成分を分離させることなどから, 歯周ポケット内の動態は多数の因子の相互作用により成り立っているため, さらに研究を進めていく必要があると考えている.
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