研究概要 |
ヒトのデンタルプラーク中で最も優勢を占めるC血清型S.mutansの代表株としてIngbritt株を選び、BHI培養上清から50%飽和硫安塩析によって抽出したた粗GTaseをクロマトフォーカシング(PH7→4)、ついでハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーに供与した。精製した酵素の比活性は6.7倍となり、スクロースとの反応生成物は水溶性グルカンが87%を占めたことから、水溶性グルカン合成酵素成分(GTase-S)としてFreundの完全アジュバントと共に家兎に皮下免疫し、得られた抗血清を1/3飽和硫安塩析して抗GTase-S抗体を含む画分を粗分画し、実験に用いた。対照には非免疫血清を用いた。抗GTase-S抗体は粗GTase,GTase-S活性をともに80%以上阻害し、菌体のスクロース依存性ガラス壁付着を減少させた。ついでa〜gの各血清型のS.mutans由来ののGTaseとのオクタロニーテスト、GTase活性および粘着性グルカン合成に対する抑制効果を検討した。抗GTase-S抗体はc/e/f型菌のGTaseとの間に一本の沈降線を生じ、a/d/g/b型のものとでは生じなかった。また、すべての血清型由来のGTase活性を抑制し、その抑制効果はa型のもので低く、その他のものでは菌株による大きな違いは認められなかった。一方、粘着性グルカンの合成に対する抑制は菌株によって差があり、c/e/f型菌の酵素の方がa/d/g/b型菌の酵素よりも強く抑制される傾向が認められた。以上の結果、血清型CのS.mutans由来のGTase成分GTase-Sに対する抗体は、C型菌のみならずe,f型菌の粘着性グルカンの合成を抑制しうることが明らかとなった。 なお、非水溶性グルカンを主体とするグルカンを合成する酵素成分は分離精製されなかったのでこの点については今後の研究の課題であると考える。
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