研究概要 |
1.対象は20歳より42歳までのDown症候群患者で、いわゆる生理型精神遅滞者と健常者を対象とした。 2.方法および結果:表面電極法により筋電図を採取した。また握力を測定し口腔以外の筋活動の指標とした。 (1)両側側頭筋,咬筋、顎二腹筋前腹について、安静,咀嚼運動,飲水時に採取した筋電図によると、対照者では安静時にほとんど筋活動がみられないのに対し、Down症候群患者では散発的に筋収縮がみられた。また、顎運動時には、対照に比して著しく低い筋活動しかみられず、ことにピーナッツのような堅い食品ではまったく咀嚼できない例もみられた。 握力が7kg以下の者ではこれらの筋活動も低い傾向が認められた。 (2)両側側頭筋,上下唇口輪筋について、器からの液体摂取,ストローを吸う,吹くの運動時に採取した筋電図によると、対照でもばらつきが認められるが、Down症候群では対照にほぼ匹敵するものから、ストロー操作の困難なものまでの幅があった。 3.Down症候群患者では、咀嚼筋の活動が一般に弱いのに比して、口輪筋は瞬間的には健常者程度の筋力を発揮することができるようである。しかし、いずれも健常者より短時間で疲労する傾向がある。 今後、有効な筋訓練法を考案するに当っては、上記の特性の他に、歯周疾患,歯の早期喪失,知能,気質を考慮にいれる必要があると考えられる。
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