研究概要 |
1.Down症候群成人について, 両側側頭筋, 咬筋, 顎二腹筋, 口輪筋の筋電図を表面電極法により採取した. 2.Down症候群では咀嚼筋の活動が一般に弱いのに対し, 口輪筋は瞬間的に正常者に匹敵する程度の活動がみられるものもある. しかし, いずれも短時間で疲労する傾向であった. 3.この症候群患者では知能が低く, 検査困難なものがあったので, 比較的協力のえられる対象を選んで, 咀嚼運動および口輪筋に訓練を2ケ月間行った後, 筋電図を再採取した. 4.その結果, 筋電図上で運動リズムの改善, 筋収縮力(筋電図上振中の増加と持続時間の延長)のみられた例もあるが, 進歩のみられないものもあった. 5.Down症候群では, 歯周炎が若年期から進行し, 成人期には歯の欠損の著しいものが多い, このような症例では咀嚼自体が不安定であって, 欠損補綴を先行させなければならないが, 可撤義歯を受けいれられない症例の方が多いようである. 6.以上よりDown症候群成人に対する咀嚼などの訓練には限度があるものと思われた. したがって幼児期よりの対応が必要であるのは勿論であるが, 成人には歯周疾患の予防と治療, 補綴法の考案, 行動科学といったように総合的アプローチが重要と考えられる.
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