研究概要 |
昨年我々は名古屋市における3歳児う蝕経験状況の変化を16の区別に高次多項式による時系列解析を行い、う蝕の減少の開始した時期、減少に加速のついた時期、減少が鈍化した時期について報告した。今回は各区を減少傾向の型により4つの群に分類し、群別に1歳6か月児健診時点の問診を中心としたスクリーニング基準と3歳児健診時点のう蝕経験状況との関係(予測性)について分析し,地域差を考慮したスクリーニング基準について検討したので報告する。 方法.昭和60年12月から61年4月までの間3歳児健診を受診した3279名中1歳6か月児健診時に健全者であって、その時の問診が完備していた1809名を分析対象とした。名古屋市16区を3歳児う蝕経験者率及びdeftの変化のいずれもう蝕減少傾向が安定した群と減少傾向にある群、さらにう蝕の多い群、少ない群と4群に分け、1歳6か月児健診の調査項目から、A歯口清掃していない,B離乳未完了,C間食回数1日3回以上,D間食摂取不規則,E歯垢多い,F悪い間食1日8品目以上 G主な保育者母親以外の7項目について、その各組合せも加えスクリーニング規準とし、3歳児時点のう蝕経験状況を敏感度+特異度で評価した。結果、う蝕が現在も減少傾向にあり、かつ有病状況も低い群に比べう蝕が多くかつ減少傾向が安定している群の方が敏感度+特異度が高い傾向にあり、口腔内状況の悪い地区ほど1歳6か月児時点の保健行動による予測性が高いことが認められた。全体で離乳未完了,間食回数,間食摂取状況の保健行動による予測性が高かったが、口腔内状況の悪い地区では離乳による予測性が高かったのに対し、口腔内状況の良い地区ではそれは低く、歯垢の予測性が相対的に高くなる傾向にあった。以上の点から幼児歯科保健対策における地域差の考慮の重要性が示唆された。
|