研究概要 |
最近の有機光化学反応において、光電子移動反応(SET)は中心的位置を占め、多くの研究成果が上げられている。しかし、合成的に有用な反応を開発するという観点から見れば、その成果は未だきわめて少い。我々の研究は、合成的に有用な「光電子移動を経る反応」の開発をめざしており、即にいくつかの重要な反応の開発を行ってきた。その成果を基にさらに以下二つの研究成果を得た。 1)分子内にドナー(ジメトキシナフタレン等)を有するスルホンアミドの光加水分解反応は、高収率,高効率の反応で、アミン保護基として有望であるが、1の誘導体(n=1〜3,オルト,メタ,パラ置換ベンゼンスルホンアミド)を合成し、光加水分解反応を比較した結果、n=1、パラ体が最良(量子収率=0.65,フリーアミンの生成収率〜92%)であった。 2)MPM(p-methoxyphenylmethyl)基のアルコール保護基としての有用性は、多くのマクロリド,ポリエーテル等の合成により実証されたが、さらにこのエーテル型保護基の有用性を拡げるため、3のタイプのエーテルを合成し、光開裂反応を検討した。2のようなアクセプター共存下、3を光射すると、脱保護されたアルコール(ROH)が高収率で得られた(〜90%)。種々の他のアルコール保護基が共存する基質の反応の検討はこれからであるが、ナフタレンのみを選択的に励起できるので、脱保護に関して選択性の高い有用な保護基になりうると期待される。
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