研究概要 |
1 CsF存在下での第一級プロパルギルエーテル体のクライゼン転位反応の詳細の検討:前年度において第一級プロパルギルエーテル体は, CsF存在下グライゼン転位を行なえば, 予測に反して6員環ではなく, 5員環に閉環することを見出したが, 本年度は本反応をさらに詳細に検討した. まず, 添加するCsFの量を変化させ反応を行なった. その結果, 0.01モル等量でも約60%の収率で5員環閉環体が得られてくることが判明し, 5員環形成にはCsFは触媒量で良いことが明らかとなった. 次に, 本反応がCsF以外のフッ化物(KF, CaF_2, BaF_2)あるいはCsClでも進行するのかどうか調べた. いずれの場合も熱のみの場合と同様, 5員環ではなく, 6員環閉環体のみを与え, 5員環形成にはCsFが必須であることを明らかにした. 2 5員環形成反応の応用:ケレリスリンを始め4連続置換ベンゼン核を有す天然物の合成に, 重要な鍵化合物としての役割を果たす4の前駆体と考えられる2の合成に この CsF存在下でのクライゼン転位を応用した. 1は2を22%の低収率でしか与えなかったが, アセタール体(3)にすれば, 2の収率は75%に向上し, 本反応が置換基効果を受けるものの, 合成反応に十分利用出来得ることが明らかとなった. なお, 他の数種のエーテル体についても, 反応がスムースに進行することを認めた. これらの成果の一部については, 日本薬学会第108年会(広島, 1988年)に発表予定である.
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