研究概要 |
ウリノキ科塩基ankorine(1)の類似体として, 2位側鎖の酸化レベルが異るalancine(II),8-hydroxyprotoemetine(III),2-エチル体(IV)を次のようにして合成した. 1.出発原料として必要なcincholoipon ethyl ester〔(+)-V〕は, 市販品として入手容易なキナ塩基cinchonineから, 既知の7段階変換によって通算収率50%で製造することができた. 2.(+)-Vは, 本研究代表者らがウリノキ科lenjoquinolijidine型塩基のキラル合成のために開発した合成戦略「cincholoiponの合成的組込み法」に従って, 10段階の化学変換を経て3環性アミノ酸エステル(-)-VIを与えた. 3.上記の(-)-VIをアルカリ性で加水分解し, 次に水素化分解(Pd-C/H_2)を行ったところ, IIが高収率で得られた. また, (-)-VIを水素化分解(Pd-C/H_2)した後にi-Bu_2AlH還元すればIIIが得られ, これを更にWolff-Kishner還元にかけることによってIVを高収率で合成することができた. 4.I-IVの類似別途合成経路として, (+)-Vにラクタム構造を構築するためにRuO_4酸化経路を確立した. 5.このようにして得たalancine(II)は, 意外なことにSchiff教授らが天然から単離したサンプルとは一致しなかった. しかし, 合成品を塩酸塩に導いたところ, この塩酸塩は同教授らが遊離塩基であるとしていた天然品と一致した. このことから, 同教授らがalancineの遊離塩基として報告していた各種データは間違いで, 実際には塩酸塩についてのものであったことが判明した. 更に, 天然からは遊離塩基の形では未だ単離されていないalancine(II)そのもの及び未発見のIII,IVの各種データは, 上記の合成品について充分に取揃えることができた.
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