研究概要 |
1.検体の入手および入手後の処理のシステム化:強心配糖体が投与されていない慢性腎不全患者より血液濾過法にて得られた限外濾液の2ないし3リットルを無菌的に採取し、これを凍結乾燥した。 2.生物検定法の確立:分離操作の指標としてヒト赤血球およびイヌ腎,ブタ脳(ともにシグマ社)の【Na^+】,【K^+】-ATPase活性の測定方法を確立した。 3.脱リン操作:下記酵素活性を測定する際、試料中の無機リン酸が測定結果を妨げるため、試料中より無機リン酸を除く必要がある。この点は高純度のケイソウ土を原料とするExtrelutを使用することにより良好に目的を達せられた。 4.バナジウムイオンの存在:しかしExtrelut自体より、水およびメタノールにて白色の溶出物質が認められ、この溶出物質中にバナジウムイオンが存在することが確認された。バナジウムイオンは強力に【Na^+】,【K^+】-ATPaseを抑制する。我々の求める内因性の【Na^+】,【K^+】-ATPaseの抑制因子を検出する上で、バナジウムイオンは分離操作の妨害となるため、以後Extrelutは使用しないこととした。 5.逆相カートリッジ:限外濾液凍結乾燥物をまず石油エーテルとクロロホルムにて抽出し、水層部を逆相カートリッジに吸収させた。これより得られた水溶出分画はさらに分子ふるいに付し、得られた各分画を生物検定に付したが、すべての分画にて抑制効果は認められなかった。しかし逆相カートリッジからの水:メタノール系溶出分画では、1mg/mlの濃度におい て【Na^+】,【K^+】-ATPase活性を 5.6%ないし 4.8%まで抑制した。またこれら抑制分画中にはバナジウムイオンは存在しなかった。 6.今後の方針:上記抑制分画の詳細な検討と分離・精製を進めていく予定である。
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