研究概要 |
いわゆる樹脂配糖体は、ケンゴ子,ヤラッパ根,オリザバ根,ハリアサガオ種子などヒルガオ科植物の根,種子に特有の瀉下成分として古くから知られる高分子のコシプレックスグリコリピッドであるが、これまで分離精製の困難さから、混合物のまゝ水解して得られる有機酸,オキシ脂肪酸,配糖酸の構造研究のみにとどまり、その本体の構造はおろか単離された例を見なかった。我々は、オリザバ根,ハリアサガオ種子のエーテル可溶性樹脂配糖体混合物,オリザビン,ムリカチンからそれぞれ4,5種の真正樹脂配糖体の単離構造決定に成功し、Mannichらの提唱した推定構造と異なるモノマーでしかも大環状エステル構造をもつことを明らかにした。 本研究では、1)ケンゴ子のエーテル不溶性樹脂配糖体混合物ファルビチンの構成々分の再検討を行い、10種の有機酸(acetic,propionicと,isobutylic,nーbutyric,αーmethylbutylic,nーvalericと,angelic,tiglic,milic acid)および2種のオキシ脂肪酸(jalapinolic,3,11-dihydroxy palmitic acid)およ3種の配糖酸(pharbitic acid C,D,E)を単離し絶体配置を含む全構造を明らかにした。樹脂配糖体本体の単離精製は目下続行中である。2)ハリアサガオ種子中の樹脂配糖体については先の5種のほか新たに3種(Mbー6,Mcー1,Maー1)を単離し、それぞれCOSY,NOESY,LSPDなどのNMRスペクトルの解析,部分水解生成物の検討により、それぞれ配糖酸を異にする大環状エステル構造のモノマーと決定した。3)樹脂配糖体の構成々分である有機酸,オキシ脂肪酸のうち,αーmethylbutylic acid,milic acid,jalapinolic acidは不斉炭素を有するが、これまで絶対配置が決定された例はない。ケンゴ子,ハリアサガオ種子のいずれから得られたものも、Horeau法などによりそれぞれ2S体,2R,3R体および11R体と決定した。
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