研究概要 |
近年、KiSSingerらにより開発された電気化学検出高速液体クロマトグラフィーは、カテコール,フェノールに対して高感度,高選択性を示すことから生体内カテコールアミン等の分析に汎用されている。しかし、その高選択性の故に適用範囲が制約され、高感度性が十分には生かされていない。そこでこれらの点の改善を目的として、易酸化性で酸化環元の可逆性に富むフェロセンを電気化学活性基とするプレラベル化剤を開発し、生体成分の分析に適用した。 まず水酸基に対する誘導体化剤としてacyl azideを反応活性基とするferro-cenayl azideを合成した。Ferrocenoyl azideは主なステロイド水酸基と緩和な条件下反応し、定量的にウレタン誘導体を与えた。本誘導体は、他の電気化学活性物質が応答しない加電圧+500mV付近で容易に酸化され、高感度かつ選択的検出が可能であった。本法をdigoxigeninのin vitroにおける代謝経路の解明に応用し、3位水酸基が異性化することを明らかにした。 ついでグルクロニドの誘導体化剤として2-ferrocenyl ethylamineを開発した。本試薬は水溶性カルボジイミドの存在下1-2hrで、ほぼ定量的にカルボキシル基と反応するうえ、生じたアミドは電気化学検出器に対して高感度かつ高選択的な応答を示した。本法を妊婦尿中estrogen glucuronideの分析に応用したところ、estriol 16-glucuronide,estrone glucuronideの定量が可能であり、radioimmunoassayの成績とも良い相関を示すことが判明した。また妊婦尿中の微量catechol estrogen glucuronideを同様に誘導体化し、そのクロマトグラフ的挙動,電気化学的性質からグルクロン酸の抱合位置を証明した。
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