糖尿病治療薬の開発研究などにおいてインスリンレセプターのインスリン結合能の簡便な測定法が望まれている。そこで、新規にタンパク質間の架橋に用いる試薬を開発し、まず、インスリンB鎖29番目のリジンのε-アミノ基を介してペルオキシダーゼ(POD)を標識したPOD標識インスリン(POD-インスリン)の調製に成功した。これを用いてレセプターのインスリン結合能をPOD活性を指標として測定する方法を開発するとともに、微量インスリンのレセプターアッセイを開発した。 1.新規に合成したスペーサー長さの異なる5種の架橋試薬のうち、N-(ブロモアセトアミド-n-プロピオノイロキシ)スクシンイミドを用いてPOD-インスリンを調製した。2.ラット肝インスリンレセプターリッチ細胞膜溶液にホスホリパーゼC(インスリン結合能の検討には存在および非存在下)を加え23℃90分ふ置する。PODインスリン溶液及びインスリン2〜2×【10^4】ngを加え、10℃15時間振盪する。細胞膜を酢酸セルロースフィルター(孔径0.2μm)上に集め、洗浄後、フィルター上に集めたレセプター結合物のPOD活性を測定した。この測定には申請者が既に開発した3-(P-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸を用いる蛍光法を使用した。上記の操作により、2-600ngのインスリンを測定することができた。また、ホスホリパーゼCにより、インスリンレセプターは約2.5倍インスリン結合量が増加した。この性質を用いることにより、潜在的なインスリンレセプターのインスリン結合能をも測定できると考えられる。上記のインスリン測定は、酵素標識法によるポリペプチド性ホルモンのレセプターアッセイが可能であることを初めて示した実験であり、この点につき大きな成果が得られた。次年度では、スペーサー長さ、酵素の種類等を変え検討することにより、より高感度なレセプターアッセイが実現できるであろうと考えられる。
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