研究概要 |
本研究ではナトリウムチャンネル分子の神経細胞膜上での立体配置のトポロジーを検索するために、タンパク質化学的手法と免疫化学的手法を駆使して取り組んでいるが、本年度は以下のような知見を得た。 1.光化学修飾によるトキシン結合部位の解明:化学修飾実験に用いる光親知性テトロドトキシン誘導体を、これまでに報告されている結果よりも高収率で調製することができた。この誘導体のナトリウムチャンネル標品に対する結合活性は、親化合物のテトロドトキシンと遜色ないことも示された。これを用いて光化学反応を行ったところ、電気ウナギのナトリウムチャンネルタンパク(250KDa)を特異性高く化学修飾することに成功した。 2.部位特異性抗体によるチャンネル分子立体構造の解明:チャンネルタンパクの全一次構造の中から機能発現に関与すると思われる特定のアミノ酸配列を選び出し、対応する4種のペプチド群を合成した。またこれらに対する抗ペプチド抗体を作成し、その免疫学的反応性を調べた。それらの結果からチャンネルタンパク中における特定アミノ酸配列の分子中での露出・埋没度,あるいは規則性ある立体構造をとっている部分などを推定する手がかりが得られた。 3.糖ペプチドの単離と構造研究:膜タンパク(ナトリウムチャンネルもその一つ)の糖鎖は、生体膜の外側に局在することが知られている。したがって糖ペプチドを単離し、そのアミノ酸配列を解明すれば、チャンネルタンパク質の膜外に存在する部分が明らかとなる。今年度はチャンネルタンパク質を酵素消化し、糖ペプチドのみを効率よく回収する手法の開発を検討したところ、インドール酢酸誘導体をリガンドとするアフィニティクロマト法により、シアロ糖ペプチドのみを分画する手法が開発できた。
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